[社員のおすすめする本] 冷血
冷血
著者 トルーマン・カポーティ
訳者 佐々田 雅子
発行 新潮社
「ティファニーで朝食を」で知られる作家トルーマン・カポーティが
約5年にわたって事件を調べあげ、事実に基づいた小説。
あまりに有名な小説だが、新訳がでるまで、この本を手に取ったことはなかった。
1959年11月。カンザスに住む農場主の一家4人が、何者かによって惨殺された。
事件発生から警察による捜査、そして犯人が絞首刑に処されるまでを追っているのだが、
読めば読むほど人間の心の闇とはどこまで深いのかと考えさせられる。
わずか数十ドルしか奪えなかった一家殺人、
逃亡した先でのんきに詐欺を働く犯人たち、
そして逃亡生活中でも大事に持っていた物的証拠、動機のない殺人・・・。
現代の事件でもいえることだが、よく犯人の成育環境を
「犯行にいたるまでの動機」として捕らえる向きがある。
しかしそれは安易に解釈されて報道されていいものなのか。
犯人を掘り下げ・知ることで何が生まれ、そして知らなけらば
何が失われるかということを突き詰めて行く作業自体が
事件全容を見渡すことになるという事に、フツーの人は
戸惑い・拒否してしまうだろう。
なぜならば犯人と被害者以外には無関係だからだ。
だからこそ著者がこの事件を冷静に、
そして客観的に纏め上げているのことで
物語に凄みを与えているのは天才的といえる。
動機のない殺人なんてありえるのだろうか?
ということにも、きちんと事実を調べ、
犯人らの動機や思考には理解できないけれど、
なぜか著者が共感していたような印象も受ける。
また世間を騒がした事件の裁判というのは、
どういう裁判内容なのかというのもカポーティはさりげなく執筆している。
当時からアメリカは陪審員制度。
日本でも数年後裁判員制度が始まるということを、
深く受け止めなければならない。
犯人たちの[罪の償い]である絞首刑が行われるとき、
読者は深いため息をするだろう。
古いとは感じられない、いまでも斬新な本である。

担当 O・K
この本にご興味を持たれたら、
ぜひ、新潮社さんの紹介ページをご覧になってみて下さい。

